コンソーシアムニュース

20年10月
さがまちカレッジ人気講師が推せんする「わたしの一冊・わたしの一本」 山本ゆかり先生

新型コロナウィルス感染症の影響でお家で過ごす時間が増えた方が多いと思います。
そこでさがまちカレッジでは、これまでに様々な分野の講座を担当していただいていた先生方に、
【おすすめ】先生が担当した講座に関する勉強ができる作品
【おためし】新しいことを勉強する良いきっかけになる作品
【お気に入り】先生の好きなことに関する作品や、先生の心に残る作品
の3つの分類から書籍や映像作品などを紹介していただきました。

「読書の秋」の今月は、一般講座の先生方からの推薦作品を紹介していきます。

この機会に新しい一冊、新しい一本との出会いを楽しんでいただけるとうれしいです。

今回は、多摩美術大学非常勤講師の山本ゆかり先生です。
山本先生が担当したさがまちカレッジ:春画を旅する~恋をめぐる江戸文化~

【おすすめ】へんてこな春画
対象:一般の方
紹介文:笑いやユーモアは春画の本質のひとつですが、多くの春画の中からとびきりおもしろい場面を選りすぐり、豊富な図版とわかりやすい言葉で一図ごとに解説した本です。著者の石上阿希先生は、春画研究で博士号を修得された方。その豊富な知識を余すところなく披露された贅沢な内容です。
江戸時代の人々の旺盛な想像力と笑いのセンス、知的な遊戯性、教養とそのもじりのギャップなど、娯楽としての春画の側面を楽しみながら学べる一冊です。別名笑い絵とも称される春画の“笑い”とは何なのか、読書後にそれが見えてくるようです。

 

【おためし】日本美術の見方(岩波 日本美術の流れ7)
対象:高校生以上
紹介文:最近では春画のことを掘り下げる機会が多く、ともすれば狭い分野にばかり視野が向きがちになります。そのようなときにこの書籍を読むと、美術史の視界が大きく開かれるのを実感します。
日本美術史の泰斗・辻惟雄先生(1932~)が広い視野から日本の美術の歴史を見渡し、その特質を説いた書籍です。「かざり」と「あそび」の要素に大きな特質を見出され、具体的な作品を例に、脈々と流れる日本美術の特質とその魅力に気付かせてくださいます。
装飾的なものと簡素なもの、抽象的なものと写実的なもの、真面目なものと不真面目なもの…など、日本の美術にはさまざまな性質があります。どのような性質の美術に触れても、より深く味わうことができるような鑑賞の座標軸、着眼点が示されています。

 

【お気に入り】自分のなかに歴史をよむ
対象:中学生以上
紹介文:大学を卒業し美術館に就職したものの、自分の専門といえる分野もなく、日常に追われるだけの日々を過ごしていた頃に出会った本です。
西洋中世史の歴史学者・阿部謹也先生(1935~2006)が十代の人に向けて執筆した著作。前半は修道院で少年期を過ごしたご自身の生い立ちのなかから、西洋の歴史学研究へ踏み出す問題意識の変遷が丁寧に語られます。
生きてゆくことと学問をすることの接点をご自身に問い、それに取り組まなくては生きていくことができないテーマとは何かを探しつづける。後半はここに立脚なさった阿部先生の歴史観と西洋史の光景が広がります。阿部先生の研究者としての原点を述べた内容ですが、私が研究の道に踏み出す最初の一歩の背中を押してくださった思い出の本です。