今回の心霊WEB企画は多摩美術大学だ。取材に協力してくれたオカルト研究会代表の伊勢智日(いせ ともか)氏。直接多摩美術大学の噂を聞いてみた。

多摩美術大学にまつわる怖い噂に入る前に、オカルト研究会、そして彼の紹介をしておこう。オカルト研究会(通称 オカ研)はまだ発足して一年ほどの組織で、主な活動は心霊スポット巡りやオカルト分析である。その際、連絡窓口となってもらったのがこの会の代表伊勢智日という人物だ。しかし、あるとき多摩美に詳しい知人(以下A氏)にオカ研の話をした時にそれは起こった。

A氏「オカルト研究会の部長には話は通してあるの?」
取材班「はい。とても丁寧に対応してもらっています。代表の伊勢智日という方です」
A氏「オカルト研究会の代表はS・T君で、伊勢君なんて知らないよ?」
取材班「え?」

話によると、伊勢智日なる人物は在籍しておらず、オカルト研究会の代表者はT氏だと言うのだ。
じゃあ、今まで連絡を取り合っていた人物は誰なのか?もしや、既にオカルトは始まっているのか!?

「さがまちの方でしょうか?」

取材日、茹だるような暑さの中、その人は長袖長ズボンというオカルト的な出で立ちで現れた。
オカルト研究会部長、S・T氏である。
柔らかい物腰のとても好感のもてそうな人物だ。だけど気になるのはあのこと……。
部室で話を聞く途中、伊勢智日なる人物について聞いてみた。すると

S・T氏「ああ、伊勢智日とS・Tは同一人物です。」
取材班「え?」
曰く、伊勢智日は字(あざな)のようなもの。
民族学を研究する学者には、一部本名(諱 いみな)とは別の名(字 あざな)を名乗ることで、災いから身を守ることがあるらしい。そこでT氏もオカルト分析をする際に伊勢智日を名乗っているそうだ。さすがオカルト研究会部長。なんかすごいのだ!

というわけで、多摩美術大学にまつわる噂を、紹介していこうと思う。「――これは友達の友達から聞いた話だけど……」校庭で、階段で、教室で、いたる所で耳にした――――
学 校 の コ ワ イ う わ さ 覚えていますか?

一つ目の噂

手のオブジェの噂

食堂の近くに、巨大な手を模した彫刻のオブジェがある。このオブジェのオカルト話は絶えない。
以前、オブジェのそばには電話BOXがあったらしい。

その電話BOX出るのだ。それも冗談じゃなく。

携帯電話の普及する前だろうか、夜おそくその電話BOXを使用すると、ガラス一面に手形がびっしりと付いていたということが頻繁に起こったらしい。

あまりにも多発する心霊現象に、この手のオブジェが慰霊として置かれたとか……。

そして年に一度総務課が彫刻を外し、お焚き上げをしているという噂だ。
もう電話BOXは別の場所に移動されてしまったが、このあたりでは何かを見たという噂が今も絶えない。またお焚き上げの件についても、学校関係者は否定しているが、実際に台座から無くなっているのを見たという学生は多いらしい。

二つ目の噂

鏡の無い女子トイレの噂

絵画北棟の四階には女子トイレが一つある。ここには、今まで鏡が設置されていなかった。なぜなら、写りこんでしまうからだ。ここでは霊を直接見たという者があとを絶たない。伊勢氏の話によれば、ある女性徒がこのトイレを使用中 ドアの向こう側に人の気配を感じた、ドアの隙間から歩いていく足が見えたらしい。ここまではオカルトでもなんでもないのだが、その足は本来壁がある方へ歩いて行き、そのまま消えていったとか……。

つい最近ここには鏡が設置されてしまったものの、はじめ誰かのイタズラによって「除霊済み 総務課」と書かれた張り紙が貼られる事件があったらしい。このイタズラに対して、当時の学校側は校内放送を行い総務課の関与を否定。「学生からはオカ研のせいにされて、困りましたよ」と伊勢氏は語る。しかし、逆を言えばそれだけ有名なスポットであるということだ。
鏡が設置されてからまだ何も起こっていないらしいが、時間の問題なのかもしれない……。

三つ目の噂

赤いワンピースの女の噂

多摩美には赤いワンピースを着た女の霊が出る。その目撃談は広範囲に渡り、駐車場、絵画東棟、さらにはこの話を聞いていた部室棟にまで及ぶそうだ。最近では、この部室棟でこっくりさんを行っていた学生達によっても目撃されたらしい。
それも有名な噂のようだ。

用語解説:こっくりさん
日本では通常、狐の霊を呼び出す行為(降霊術)と信じられており、そのため狐狗狸さんといわれる。机の上に「はい、いいえ、鳥居、男、女、五十音表」を記入した紙を置き、その紙の上に硬貨(主に十円硬貨)を置いて参加者全員の人差し指を添えていく。全員が力を抜いて「コックリさん、コックリさん、おいでください。」と呼びかけると硬貨が動く。 1970年代にはつのだじろうの漫画『うしろの百太郎』の作中でコックリさんが紹介され、少年少女を中心としたブームになった。しかし、精神に異常をきたす子供が出たために一時期学校で禁止されることもあった。(ウィキペディア引用)

「赤いワンピースの女」のような話はこの学校特有のものではないように思える。トイレの花子さんのように、どこの学校にも似たような話があるだろう。赤いワンピースというのも、どこか聞いたことがあるフレーズだ。
だが、この話の録音を聞いていたとき、女性の笑い声が頻繁に混ざっていた(この時だけ)のは気のせいだろうか?

四つ目の噂

鬼門封じの彫刻の噂

正門にある彫刻は鬼門に関係しているという噂。
風水の方位図を多摩美術大学に重ねて見たところ、正門付近がちょうど鬼門にあたるそうだ。

用語解説:鬼門
土地、家の中心から北東(丑寅)の方角のこと。それに対して南西を裏鬼門とする。鬼門、裏鬼門に三備を設けず といい、風水家相学では三備=トイレ・台所・玄関を設置することは絶対に避けなければならないとされている。   

この正門の近くに巨大なオブジェがある。これはその鬼門を封じる役割があるらしい。
世界的に有名な彫刻家の作品らしいのだが、多摩美のオブジェは風水的な意味合いで設置されたものも少なくないとか……。

また、裏鬼門の近くの南通用口は常に鍵が取り付けられ使用できなくなっている。ここでは何か良くないモノを見たという噂がある。
ちなみに多摩美の学生は鍵がかかっていても、この門を乗り越えてしまうらしい。

五つ目の噂

卒業制作で焼身自殺の噂

これはあまりにも有名で、多摩美内ではもちろんネット上でも見られる噂である。

曰く、卒業制作で追い詰められた四年生の学生が校舎の屋上で自身の焼身自殺をビデオに録画し、それを教授に提出したという噂だ。
どこの棟かはわからないが、共通するのは屋上で自殺を図ったということ。そのテープの行方については、教授の研究室や総務課で保管してあるとの噂が流れている。

これはかなり古くからある噂で、元をたどれば1970年代末頃に起こったという話も見られるようだ。
この学生のその後については諸説あるが、焼身自殺で死んだという人の霊が出るという噂は聞いたことがない。亡くなったとすれば幽霊の噂の一つは聞いてもいい。そう考えるとこれだけ浮いていて不気味だ、と伊勢氏は話してくれた。

六つ目の噂

最強の旧図書館の噂

多摩美術大学最強の心霊スポット、旧図書館。
三年前くらいに取り壊されてしまったが、その前はダントツのオカルトスポットだったらしい。これはもはや噂レベルではなく、何人もの人間の目撃・体験談があげられている。

曰く、御札の貼られた部屋がある。曰く、存在しないはずの廊下を歩いたなど……オカルト話にこと欠かないそうだ。
今は跡形もなく取り壊され、跡地には雑草が茂っているがこの付近では未だに心霊現象が起こっているようだ。さらに、この施設には地下室がありそこに御札の貼られた部屋が存在すると伊勢氏は語る。旧図書館は共通教育棟と地下で接続していたそうだが、その場所にこの部屋があり、地下を埋め立てられなかったそうだ。一般的には「地下はもう残っていない」ということだが……。

実際、共通棟校舎内の階段から地下へ来てみても、確かにそれらしいところは無かった。しかし、外から見ると丘の側面に何か扉があることを見つけた。学校の許可が取れなくてそこに入ることはできなかったが、もしやここがそうなのかもしれない。
御札の部屋は、まだ存在しているのかも……。

七つ目の噂

彫刻科の手の幽霊の噂

ここまで話を聞いてきたところで、伊勢氏は携帯を取り出した。なんと昨日ツイッターで幽霊を発見したとの報告があったらしい。そして、報告者とのアポが取れたらしいのだ!すごい!まさかそんな最近の話を聞ける機会に出くわすなんて!
さっそく、僕たちは報告者のいる彫刻棟へ出かけた。

彫刻棟では、Tと名乗る女性が話をきかせてくれた。なんでも、彫刻棟の機械室の中で手の幽霊が出るらしい。そして、彼女のダウジングが霊の気配を捉えたらしい。
Tさん(女)は寺生まれではないが、ダウザーだったのだ!!!
※ダウザーとは、ダウジングが出来る人のこと。伊勢氏がTさんをそう呼んでいたので使わせてもらいました。

用語解説 ダウジング(ペンデュラム)
今回、彼女が使っていたのはペンデュラム型ダウジング。ペンデュラムとは、ダウジングに使う振り子のことだ。(写真は伊勢氏のペンデュラム。彼もまた、ダウザーであった)
このダウジング・ペンデュラムは潜在意識の動きを表すツールだ。潜在意識が普段意識することの出来ないものを捉えることによって刺激され、微妙な筋肉の動きが発生し、この振り子が動くという仕組み

(実は鏡のない女子トイレでも伊勢氏はこれを使って霊の存在を突き止めようとしていた。やはり何らかの反応はあるらしい)
さっそくT氏に機械室(写真上2)でダウジングをしてもらうと、ペンデュラムが少し回転しているようだ。ここに現れる霊について、さらに話を聞かせもらった。

彫刻棟の裏にある機械室では、手の幽霊と小さいおじさんが現れるらしい。どちらも悪さをすることはないらしいが、目撃する者は多いという。
やはり美術、しかも彫刻科だけあって手の幽霊についての噂は多い。しかし、小さいおじさんとはなんだろう?

実は、小さいおじさんは全国で目撃されている。芸能人の目撃証言もあり、日本の都市伝説の一つと言っても過言ではない。
手の幽霊もおじさんも人に危害を加えることはないらしいが、機械室を歩き回り、今も学生を脅かしているのかもしれない。彫刻科の学生さんには、指を切らないように気をつけてもらいたい。

以上、7つの噂はどうだっただろうか?
これでこの記事は終わりとなる。身近な不気味さ、不思議さを感じていていただけたら、言葉もない。今回の取材でお世話になったA氏、伊勢智日氏とオカルト研究会様の皆様方には大変な感謝を送りたい。ありがとうございました!さらなる噂はあなたの身近にきっとある、オカ研はツイッターなどでオカルト話を募っているそうなので、もしもそういう噂があれば、声をかけてみるといい。

取材・文 熊谷/丸山/西端/ 2012.8