Cities: Skylines で持続可能を考えてみた

SDGs「持続可能な開発目標」は、国連加盟193か国が2030年までに達成すべき目標として、2015年に採択されたものです。SDGsには17の大きな目標と、それぞれの目標について具体的な合計169のターゲットがあります。これらはお互いに影響しあうような内容になっており、一つ一つの目標やターゲットだけに注目するのではなく、全体に目を向けて達成を目指していく必要があります。

そこで今回ぼくたちは、そんなSDGsを達成するための「持続可能な開発」を、都市開発シミュレーションゲーム「Cities: Skylines」で体験しました。

Cities: Skylines
https://www.epicgames.com/store/ja/p/cities-skylines

スウェーデンのParadox Interactiveが販売する都市開発シミュレーションゲーム。プレイヤーは住宅や商業などの区画設定や、電気、水道、交通などのインフラ整備、さらに医療、教育、福祉などの公共サービスを整え都市を発展させていく。公害や廃棄物問題、失業といった多様な問題に直面する中で、様々な要素が複雑に絡み合った都市開発を体験できる作品となっている。
Game © Paradox Interactive AB www.paradoxplaza.com.

今回のプレイに当たって、SDGsの17の目標を、自分たちなりにそれぞれゲーム内のパラメータに解釈して、17つの目標を達成すべく、これらを2時間の制限時間内でプレイをしました。内容は以下の通りです。

2. 飢餓をゼロ
ゲームでのゴール:農地を設置

3. すべての人に健康と福祉を
ゲームでのゴール:平均健康度87%

4.質の高い教育をみんなに
ゲームでのゴール:中等教育修了95%

6.安全な水とトイレを世界中に
ゲームでのゴール:下水処理施設を整備

7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
ゲームでのゴール:再生可能エネルギーを7割

8.働きがいも経済成長も
ゲームでのゴール:失業率を10%未満

9.産業と技術革新の基盤をつくろう
ゲームでのゴール:大学を設置

10.人や国の不平等をなくそう
ゲームでのゴール:区画別幸福度の差を10%以内にする

12.つくる責任 つかう責任
ゲームでのゴール:廃棄物処理場使用率を60%未満

13.気候変動に具体的な対策を
ゲームでのゴール:平均交通量を94%未満

14.海の豊かさを守ろう
ゲームでのゴール:水質汚染度を5%未満

15.陸の豊かさも守ろう
ゲームでのゴール:土壌汚染度10%未満

16.平和と公正をすべての人に
ゲームでのゴール:犯罪率を20%未満、火災危険度を20%未満

「1.貧困をなくそう」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」の3つの目標については、ゲーム内に対応するパラメータが存在しないため、今回の目標からは除外しました。また、「11. 住み続けられる街づくりを」は、プレイ終了後に振り返りを行って達成したか判断することにしました。

開始~30分

今回街を作っていく地域は、屈曲した川に面した平たんな場所でした。

このゲームでは、道路を建設し、道沿いに区画を設定したり施設を設置することで街を形作っていきます。したがって、最初に道路を建設することになります。次に、発電および送電設備を整備していきます。まず安価に安定した電源を確保するために火力発電所を1基建設しました。この段階では再生可能エネルギーの比率は0です。発電に伴う排気による大気汚染の影響を抑えるため、街の最も外側に設置しました。続いて上下水道の整備です。上水道は川の1カ所から取水し、下水道は取水地点より下流で直接排水する方式としました。

次に住宅、商業、産業の区画を設定しました。産業区画は住民に対する汚染の影響を抑えるため、他の2区画から離れた川沿いに集中させることにしました。また、産業区画に隣接して廃棄物集積場を設置しました。

30分経過時点で、診療所、小学校、警察署、消防署を設置しました。診療所の設置に費用がかかったため、小学校の設置がすぐにできず、警察署と消防署も同様に予算不足によって整備が遅くなってしまいました。警察署の設置直前で犯罪率が40%に迫り、火災の危険度も60%を超えるなど危険な状況となっていました。火災警報器の配布を行う施策も行いましたが、この施策では目標が達成できず、財政を圧迫する結果となりました。

街の拡大に伴って電気の供給が不足しつつありましたが、新たな発電所を建設する費用がなかったため、市民に節電を呼びかける事態になりました。

30分~1時間

風力発電所を建設し、電力不足の解消を試みました。しかし、風が弱く不安定だったことで、度々停電が発生するなど、電力供給が不安定になってしまいました。拡大する需要に応じて、風力タービンの増設で対応を続けようとしましたが間に合わず、やむなく火力発電所を増設することで問題の解決を図りました。これによって再生可能エネルギーの比率は大きく下がってしまいました。さらに、電力問題にリソースを注ぎ込んだことで他のサービスが不十分になり、墓地や学校の不足、廃棄物集積場の不足、医療提供の不備が起こりました。

街の拡大とともに水の供給不足も起こりましたが、これについては川沿いの地形を生かしてさらに上流に取水施設を増設することで解決しました。

1時間~1時間30分

ごみ焼却施設が建設可能な街の規模となったため、これを川の対岸に建設しました。廃棄物の処理がスムーズになるだけでなく、副次的に電力の供給にも寄与することになります。次いで全体の交通量を抑えるべく、バス路線の開設、道路の拡張を行いました。交通量は一旦目標を達成できたものの、この間にも人口は増加を続けており、再びゴミ問題、電力不足、水不足に悩まされることになりました。

1時間30分~2時間

水不足の問題は、拡大した区画に近い場所に取水設備を設置して解決を図りました。また、電力不足は状況が切迫しており、予算の制約もあったため、安定して大出力の発電が見込める火力発電所の増設に頼ることになります。これによって電力不足は解消に向かったものの、再生可能エネルギー比率はさらに下がることになりました。ごみ問題は焼却施設の増設で対処を試み、一度は解消されたように思われました。しかしここで新設した廃棄物焼却施設に火災が発生、一時的に処理能力が半減する事態となってしまいました。ここまで火災危険度を十分に下げられなかったことが影響した形です。

さらに最初に離れた場所に設置したはずの火力発電所は、街の拡大に伴って住宅区画の中心に位置する存在になってしまっていました。そのため、排気による汚染が周囲の住民の健康状態に悪影響を及ぼし、健康度が上昇しない状態になっていました。そこで再生可能エネルギー比率を上げることも意図しつつ、川の上流にダムを建設して水力発電を開始し、問題となっていた火力発電所を撤去しました。増水によって一時的に発電能力を喪失したものの、安定した電力供給を実現し、市民の健康状態も向上していきました。

また、この時点でようやく安定した税収を得られるようになっていたため、教育強化、公共交通の無料化などの施策に予算を振り分けました。これらの施策の効果が出始めたところで、プレイ時間終了となりました。

プレイを終えて

2時間が経過した時点での目標の達成状況は以下のようになりました。また、ゲーム内の時間で開始からおよそ5年が経過しました。

2.飢餓をゼロ
農地設置:達成

3.すべての人に健康と福祉を
平均健康度87%:未達成(65%)

4.質の高い教育をみんなに
中等教育修了95%:未達成(37%)

6.安全な水とトイレを世界中に
下水処理施設を整備:未達成(人口不足)

7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
再生可能エネルギーを7割:達成(70.4%)

8.働きがいも経済成長も
失業率10%未満:達成(7%)

9.産業と技術革新の基盤をつくろう
大学を設置:未達成(人口不足)

10.人や国の不平等をなくそう
区画別幸福度の差を10%以内にする:達成(産業区画は居住エリアではないため除外)

12.つくる責任 つかう責任
廃棄物処理場使用率が60%を超えない:未達成(2回満杯に)

13.気候変動に具体的な対策を
平均交通量94%未満:達成(93%)

14.海の豊かさを守ろう
水質汚染度5%未満:未達成(6%)

15.陸の豊かさも守ろう
土壌汚染度10%未満:達成(7%)

16.平和と公正をすべての人に
犯罪率20%未満、火災危険度20%未満:未達成(7%、25%)

やってみて

結果、目標の半数以上を達成することができませんでした。

それぞれの項目について見ていくと、農地の設置は行いましたが、人口の急激な増加に伴う住宅区画と商業区画の開発により、当初の面積から大きく減少することになりました。平均健康度は、特に高齢者医療の基盤を十分に整備できなかったことが影響していると考えられます。教育面では、高校が不足していたことと、終了時点で5年しか時間が経っていないことが影響し、修了者数が少なくなっていると考えられます。エネルギーでは、最終的に目標は達成したものの、ほとんどの期間の発電を火力に頼っており、終盤まで電力供給は不安定になりがちでした。特に風力発電のコストの高さと発電の不安定さが足を引っ張る形となっており、他の様々な市民サービスにも十分な予算を配分できない状況を発生させていました。幸福度の面では、特にレジャー施設や公園の整備が十分にできなかったことが影響して、低い水準にとどまりました。また、廃棄物の処理や消防の整備は人口の増加に追い付かず、廃棄物処理施設の火災という形で市民生活に大きな影響を与えました。以上から、今回はSDGsの「11. 住み続けられるまちづくりを」は達成できなかったと考えられます。

持続可能な開発を行おうとしても、コスト、技術的な制約が大きく、結果として生活環境の整備を考えると従来の開発に近いものとなってしまうことを強く感じました。特にエネルギーやインフラに関する技術的な基盤が無ければ、持続可能性どころか日々の生活が脅かされることになってしまいます。また、今回は水源が豊富な地域であったため、水道や発電に利用することができましたが、現実に利用できるリソースは地域によって異なっており、それぞれの地域に合わせた開発手法を採ることが重要であると感じました。

このように、技術的な基盤の存在や適切な開発手法が必要であることはわかりましたが、これらを実現するためには専門性の高い人材が多く必要であり、教育の必要性も実感しました。一方で、学校教育の修了には時間がかかることを考えると、SDGsで掲げられた2030年という目標を実現するためには、多大な努力が必要だと感じます。
また、今回のゲームでは人口が増加を続け、それに伴って発生する様々な問題への対処も必要でした。しかし、増え続ける人口を追いかける形で開発を行っていくことは決して持続可能なものではなかったと思います。常に将来を見据えた計画的な開発の必要性を感じました。

今回のゲームを通じて、トレードオフの関係にもある限られたリソースという制約のもと、SDGsの17の目標を限られた時間で達成することのハードルの高さを実感しました。一方で、目標が達成されなかったときに起こることを目の当たりにし、目標達成に向けて自分たちが何ができるのか考える機会となりました。ゲームも非常に面白いので、興味のある方は是非プレイしてみてください。

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