相模原で「生物多様性」を発信!フィールドワークを通して考えたこと

生物多様性とは、どのようなものなのでしょうか

この言葉を聞いたことがある、もしくはこの言葉がどのような意味を持っているのか知っている、という方は少ないかもしれません。かく言う私たちも、さがまち学生Clubの活動の一環として、相模原市さんからご依頼をいただき、お話を伺うまで、生物多様性についてほとんど…どころか全く!と言っていいほど知りませんでした(笑)

通っている大学や、他のさがまち学生Clubメンバーに聞いてみても「よく分からないや」と回答した人が多く、その存在すら知らなかったと言う人も。どうやら私たちだけが知らないということではない様子…(汗)

私たちが生物多様性を知らなかった理由としては、生物多様性が私たち人間以外の動物や植物にのみ適応されることだ、という認識があったからではないかと考えています。確かに、生物多様性、と書くと何だか人間以外のことを指しているように思われるかもしれませんね。

…ですが、実はそうではありません。なんと生物多様性が私たちの日常や歴史、文化に対して与えてきた影響は計り知れないそうなのです!ほんとかなぁ、と一抹の不安がよぎったかもしれませんが、ご安心ください。私たちも皆さんと似たような状態でした。

生物多様性とはそもそもどのようなものなのでしょうか?

生物多様性を守ることがどうして重要なのでしょうか?

この、「生物多様性」という謎の存在について私たちは今回約半年かけて調査し、相模原市で「生物多様性」を守ろうと活動されている方々のお話を聞き、そもそも生物多様性とはどのようなものか、そしてその重要性を知ることができました。この記事ではそんな疑問を抱えた私たちが行ったフィールドワークの内容と、そこから得たことを通して自分たちなりに考えたことや、感じたことを紹介していきます。

そして、この記事をきっかけに、少しでも「生物多様性」について興味を持っていただけたなら、欲を言えば皆さんも自分の日常の中に「生物多様性」を見つけていただけたなら…と考えています! 

一つ目の取り組み:知ろう編

生物多様性を知りたくば、ここへと来るのだ

私たちのもとに届けられた相模原市さんからの依頼には、そんなメッセージが添えられていました。そして私たちは「生物多様性」という未知の存在について探るべく、相模原市立博物館を目指し、旅に出るのでした… 第一部、完!(冗談です続きます)

今回相模原市さんからいただいた依頼は「生物多様性を知り、そしてそれを知らない若者に広める」ということ。ですが、そのためにはまず私たちが生物多様性について知る必要があります。一回目のフィールドワークは、生物多様性とは?という基礎について学ぶことが目的でした。令和4年12月11日に相模原市立博物館にお邪魔させていただき、「生物多様性」についてインタビューをしてきました! 

では、ここからは博物館にて相模原市役所水みどり環境課の井上さんと、学芸員の秋山幸也先生から教えていただいたことを参考に、生物多様性について解説していきたいと思います!

実は、私たち人間を含めた動物や、植物、虫や菌の中にも多様性があるのをご存知ですか?

生きものたちの中にある多様性、それこそが「生物多様性」なのです!!!

生物多様性は、私たち人間を含めた生きものがいろいろな場所で互いにつながり合って生きていることを表現する言葉で、大きく三種類に分けることが出来ます。ちょっと難しい言い方をすると、国連によって1993年12月29日に発効された「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)」によって、生物多様性とは

『生態系の多様性』:様々な要素を持った、様々な自然環境があること

『種(種間)の多様性』:様々な種類の動物・生き物がいること

『遺伝子(種内)の多様性』:同じ種であっても、個体によって色や形に違いがあること

の三種類であると定められているのです。…なんていう風に書かれても「いやどういうこと???」っていう感じですよね(笑) そんな条約があることも初めて知ったようなレベルの私たちにはもう、何もかもがちんぷんかんぷん、全員、頭の上にクエスチョンマークが乱舞していました。私たちは最初、生物多様性のことを「食物連鎖」と似たようなものだと考えていましたが、実際はそうではなく、こんな凄そうな条約があるのだということを知り、「生物多様性」というものは私たちには関係のない何かとんでもないものなのではないかと感じたのです。

しかし、それは間違いでした。生物多様性は人間以外の動物や植物のための存在というわけではなく、人間、つまり私たちにとっても重要な存在であり、生物多様性によってもたらされる恵みによって私たちは日常を送ることが出来ていると言っても過言ではありません。私たちの日常の多くは生物多様性を保たれているからこそ得られていて、生物多様性が破綻してしまうと私たちはそれを得ることができなくなってしまうのです。ではどうして、生物多様性が破綻してしまうと大変なことになるのでしょうか?そして、どうして私たち人間にとって「も」重要だと言えるのでしょうか?

井上さんと秋山先生からお話を伺ったなかで、多くの例を紹介していただきました。

特に印象に残った三つを、皆さんにご紹介させていただきます。

生物多様性を知る:森の仲間たち編

生物多様性、と言うと人間や動物に目線が行きがちですが、植物にも多様性はあります。…と言われてもあまりピンとこない方が多いと思いますので、皆さんまずは森をイメージしてみてください。森には当然、木がありますね。まっすぐに生えている木もあれば、ぐねぐねと曲がっている木もあります。枯れていたり、若かったり、病気になっていたり、花や実をつけている木もあります。この木なんの木きになる木~(笑) 木はいろいろな状態のものがいて、とても多様ですね。相模原市にはたくさんの森があり、たくさんの種類の、たくさんの木が生えています。

木はひとりで生きているわけではありません。木も私たちと同じように、ご飯を食べ、水を飲み、いろいろな生きものの力を借りて過ごしています。木が大きくなるためには太陽と水と土からの養分が必要ですが、太陽や水はともかく、土から養分を貰うのは木にとってはとても大事なことです。土に含まれている養分は、たくさんの木に必要な栄養になります。そんな時重要になってくるのが、いろいろな生きものの存在です。例えばミミズ。ミミズは落ち葉を食べてフンをしますが、そのフンを土の中にいる微生物が分解することで土の中に木に必要な栄養が作られます。つまり「土壌が育つ」のです。こうして育った土壌には多くの養分が含まれているため木はそれを取り込んで大きく成長することができます。この「土壌が育つ」ということの重要度は森だけではなく、私たちが普段食べている野菜が作られている畑でも大きいのです。

土を育てるためには多くの生きものの協力が必要であり、どれか一種類の生きものだけが居ればいいということではありません。また、多様な種類の生きものが暮らしている状態を作るためには、森だけではなく里山や河川、湿原や草原など多様な自然環境が存在していることが重要であり、こちらもまた何か一種類の自然環境だけが存在すればいいということではありません。多様な環境があれば、多様な生きものが暮らすようになり、やがて生態系全体が豊かになっていくのです。

また、災害抑制、特に治水の面に関して生物多様性(生態系の多様性)の重要度は非常に高いんです!山や森、川など多様な要素を持った多様な自然環境(生態系)があるということにより、私たちは日常を送ることができているのです。山の方で雨が降るとどうなるでしょう?その水は地面に染み込んで、地下水になったり川に流れたりしますよね。…ですが、実は土だけでは雨水を吸収しきれません。さまざまな木や草花が山肌を覆ってくれていることで、地面はスポンジのように水を吸ってくれるんです。加えて、草木の根は土砂崩れも防いでくれます。また、木があることで一日の気温が安定し、過ごしやすくなるのです。

現在、日本では大雨の度に川の氾濫や土砂災害が発生していますが、その大半は堅苦しい言い方をすると「山林の保水能力の低下」、ひいては「樹木の種類の偏りによる土壌の弱体化」が原因であるとされています。森や山に生えている木が何か一つの種類に偏っていることで、山全体が弱々しくなり、生態系の豊かさが失われているそうです。皆さんの近所に森があれば、一度訪れてみてください。恐らくその大半が、昼であっても薄暗く、幽霊の一体や二体軽く出そうなほど、どんよ~りとした雰囲気の漂う陰鬱な森であると思われます。それらの山林は元々里山の「雑木林」であった場所が多いです。かつて人と森は今よりももっと密で近い、家族のような関係でした。人が森の成長を助けることで森全体が豊かになり、森が豊かになることで人は多くの恵みを得ていたのです。

生物多様性を知る:川のアイドル ホタル編

森や山が豊かになると、自ずと川も豊かになっていきます。川に流れている水は山や森から来ているため、山や森の生物多様性が保たれれば、川は多くの生きものにとって住み心地の良い場所になっていき、動植物に限らず多様な生きものが生息するようになるのです。豊かになった川には多くの生きものが住むようになりますが、川が豊かで、かつ綺麗だということの象徴的な存在がホタルです。相模原市は「ゲンジボタル」が多く生息している土地でもあります。では相模原に住むゲンジホタルと生物多様性にはどのような関係性があるのでしょう?

相模原市中央区には「望地(もうち)」という名前の地区があります。そこは「段丘崖(だんきゅうがい)」という、川によって長い年月をかけて生み出された階段のような地形をしていて、水田地帯になっています。堤防があり相模川と仕切られていますが、田んぼになっている場所はかつて相模川の河原だったところです。崖地の下からは必ず水が湧き出すため、人々は水路を作り田んぼに湧き水を引き入れ、お米を作っていました。現在は下水が整備された関係で湧き水だけではなく、相模川の水も使用しています。相模川から水を入れている用水路に、ゲンジボタルが住んでいるのです。

今皆さんの中には何故このゲンジボタルの話をなぜしたのか?という疑問があると思います。この望地という場所に住んでいるゲンジボタルは、外から持ってきて放したものではなく、「天然のゲンジボタル」なのです。この望地のゲンジボタルは別の土地に住んでいる、つまりは外のホタルと交わることなく生きている、かなり特殊な存在なんです!

え?ゲンジボタルはゲンジボタルでしょ?と思った皆さん。ようこそ、生物多様性という沼の入り口へ(笑) ここで皆さんに一つ思い出していただきたいのは、生物多様性の三つの要素についてです。生態系の多様性、種の多様性の他にもう一つありましたよね?…そう、遺伝子の多様性です!

ゲンジボタルという種の中にも遺伝子レベルですが違いがあるのです。同じゲンジボタルという種であっても、条件や環境が異なれば遺伝子には違いが生まれ、そのゲンジボタルの遺伝系統はその土地独自のものとなるのです。この現象はゲンジボタルだけのものではありません。他の動物や植物、虫も環境によっては「同じ種類だが同じではない」というなんだか不思議なことが起こるのです。

これはそもそも生物多様性がどうして生じるのか?というところにも関わってきます。生きものは進化の過程で同じ祖先から、自然環境や種族の中でそれぞれ異なる種へと分かれていったとされています。遺伝系統の変質から始まり、異なる種へとなっていくことを種分化と呼び、多くの場合川や渓谷、山脈や距離などといった主に地形的な「隔離」が行われたことが要因になって起こる現象なのだそうです。つまり、望地に住むゲンジボタルは、段丘崖であるため周囲から隔離されたことによって、相模原市内の他の場所で生きているゲンジボタルとは似て非なる「望地のゲンジボタル」となっているのです。

また、望地のゲンジボタルは人間が餌をあげたり、幼虫の保護を行ったりせず、比較的自然に近い状態で生息しています。ここで注目していただきたいのは、人の手が加わることで望地のゲンジボタルは生息できている側面がある、ということです。望地では、ホタルが住んでいる用水路を地元の方々が定期的に木の剪定を行ったり、水が年中流れるようにしたりするなど、皆さんが協力して保全活動を行なっているそうです。

…もしも、地元の方々が木の剪定を行ったり、水が流れ続けるようにしてくれなかったりした場合、ゲンジボタルはどうなってしまっていたでしょう? 恐らく現在のように多くのホタルが住む場所にはならなかったかもしれません。自然環境や、そこで生きる生き物に対して、人がいなければいい、人が触れなければいい、ということではないのです。例えば里山という環境や、そこで生きる生きもののように、むしろ人がいることでより良い状態になったり、人が手を入れることを必要としていたりする生物多様性も存在しているのです。

生物多様性を知る:カワラノギク編

相模原市にはゲンジボタル以外にも貴重な生きものが生息しています。お次は、ゲンジボタル同様、川周辺を生息地にしている「カワラノギク」という珍しい花についてご紹介します!今回ご紹介するカワラノギクは、その名前の通り河原を住処にしていて、絶滅の恐れがあるため神奈川県のレッドデータブックにその名前が挙げられています。河原、というやや厳しい条件の自然環境を好んでいて、現在地球上ではもう鬼怒川、多摩川、相模川の3箇所でしかその姿を見かけることはできないそうです。

カワラノギクと同じく神奈川県のレッドデータブックに名前が載っている植物の中に「ミシマサイコ」という植物があります。昔、相模原台地は紫胡ヶ原と呼ばれていました。これは、このミシマサイコがたくさん生息していたため、地名の由来になったとされています。ですが、現在ミシマサイコは相模原では既に絶滅しており、熊本の阿蘇山の方に少し残っている程度だそうです。ちなみにゲンジボタルはレッドデータブック載っていません。保全されていることでその危険性が低い、と判断されているためです。

しかし、ゲンジボタルの時にもお話したように、同じ種であっても場所や環境が違えば遺伝子には大きな違いが生まれ、その土地独自のものとなります。「阿蘇山のミシマサイコ」と「相模原のミシマサイコ」は同じ種ですが、似て非なる存在と言っても過言ではありません。カワラノギクもそうです。鬼怒川のカワラノギク、多摩川のカワラノギク、相模川のカワラノギクは同じカワラノギクという種の植物ですが、遺伝子的に見るともはや別種としていいほどの違いがあるそうです。つまり、もしも相模原のカワラノギクが絶滅してしまった場合、「相模原のカワラノギク」という種はそこでぷつん!と途切れてしまうのです。

カワラノギクがこれほどまでに数を減らしてしまった理由は、多くは私たち人間にあります。え、どういうこと?と思った皆さんにご質問です。「川」と言うと皆さんのなかにはどのようなイメージがあるでしょうか?皆さんが住んでいる場所の近くにある川はどのような姿をしているでしょうか?相模川のように立派な河原がある川を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、ほとんどの人がよく知る「川」というのは、水害対策、つまりは護岸のために川岸や川底をコンクリートで覆っているものではないでしょうか。

…残念ながら、カワラノギクはそういった川では生きていくことができません。『生態系の多様性』つまり様々な要素を持った、様々な自然環境があること。河原という自然環境が少なくなってしまった結果、その環境を好んでいた動物や植物は住処を追われることになり、様々な種類の動物・生き物がいるという『種(種間)の多様性』が危うくなり、そしてかつて相模原に生息していた「相模原のミシマサイコ」のように、同じ種であっても、個体によって色や形に違いがあるという『遺伝子(種内)の多様性』が失われてしまうという結果になってしまったのです。

わたしたちには一体なにができるだろうか?

私たち人間が自然環境や生物多様性に与えているダメージは大きく分けて、

①開発や乱獲:過剰な森林の伐採や沿岸部の埋め立て、商業利用のための過剰な乱獲や採取

②自然に対する働きかけの減少:高齢化等による里地里山の管理不足

③外来生物や化学物質の影響:外来種による在来種の捕食や交雑、毒性のある化学物質

④地球温暖化などの地球環境の変化:地球温暖化による動植物の絶滅リスクの増加

の四種類であるとされています。どれも世界的に深刻な問題となっており、何とかしないと!と活動されている方も多くいらっしゃいますが、現時点では解決の目処は立っていません。少し改善されたとしても、悪化する速度の方が圧倒的に早く、プラマイゼロどころかマイナスになる一方なのだそうです。①、③、④の三つは社会科の教科書などでも取り上げられており、ニュースでも度々報道されています。

ですが、これらと同様に、私たちの生活に密接に関わっている②自然に対する働きかけの減少に関してはほとんど触れられる機会が無く、気がついたら大惨事に!…なんてことになっている場所がとても多いそうです。里地里山は人の手が入ることで生きていると言っても過言ではなく、また日本に生息している昆虫や爬虫類のおよそ7割は里地里山の自然環境を必要としています。特に、雑木林は人による手入れがなければやがて静かに息絶えてしまい、生物多様性も失われてしまいます。その上、一度そうなってしまうと復活させるのはかなりの努力が必要になるそう…しかもその努力も私たちの代だけではなく、次の、その次の代もと続けていくことが重要であり、それは今の日本社会では難しいことなのです。

_____では、どうすれば?どうやれば生物多様性を守ることができるのか?

生物多様性とは何か、そしてどうして重要だと言われているのか、それらを学んだ私たちに出来ることはなんだろう? 大学生の自分たちでも出来るような、生物多様性を守るために出来る身近なことはなんだろう? 相模原市立博物館でのフィールドワークを終えた私たちはそう考えるようになっていきました。

二つ目の取り組み:アクション編

自分たちができることを考えた

…とは言ったものの、どんなことをすればいいかなかなか思いつきませんでした。行き詰まった私たちは、井上さんと秋山先生から「MY行動宣言」というものがあるよとヒントをもらい、それに基づいて何かアクションを起こしてみよう!とにかくやってみよう!と自分たちなりの、自分たちだからこそできることを考えてみました。MY行動宣言とは、一人ひとりが生物多様性との関わりを日常の暮らしの中でとらえ、実感し、身近なところから行動する意思表示のことです。

今回はこのMY行動宣言をベースに、二回目のフィールドワークでどのようなアクションをするかを計画することになりました。それぞれ思いついたことを提案していくなかで、地元(相模原市産)の食材だけで料理を作ってみたら面白そう!料理の時に出たごみの分別の仕方を調べてみたい!これってもしかしたら生物多様性に関係していたりするかも…?!というアイデアが浮かび、3人で時にはうんうんと唸りながらも議論を重ねていった結果、宣言の中から「たべよう」と「えらぼう」を選び、そこから『料理を作る』『ごみの分別について学ぶ』ことを思いつきました。

…その一方で、選ばれなかった案もありました。特産物を使ったキッチンカーや食堂に取材に行くのはどうか? 環境に関して学べるスタンプラリーはどうか? 生物多様性についてのイベントに参加するもしくは企画するのはどうか? などなど、色々な案が出ては消えていきました。もしかすると、今後、また生物多様性に関する依頼をいただいた際にリメイクして再登場!なーんていうことがあったりするかもしれないし無いかもしれません。

買い出しの様子

二回目のフィールドワークは約ひと月前の令和5年1月21日に実施しました。

料理をするにはまず買い出し!と相模原市中央区青葉三丁目にある「JA相模原市農産物直売所ベジたべーな」さんにお邪魔させていただきました。広い駐車場には朝9時頃にはもうかなりの台数の車が駐車していました!すごい!ベジたべーなさんで販売されている商品は、地元相模原市の農家さんが育てた美味しいお野菜や、相模原市のブランド豚「やまゆりポーク」など、なんと実に8割9割が相模原市産のもの!どのお野菜もお肉も美味しそうで、目移りが止まりませんでした…危ない危ない。ちなみにメンバーの一人は誘惑に負け、家族へのお土産という大義名分のもとコソッとお菓子を買っていました。自腹なので問題ない!…はず。

まだまだ色々見て回りたい心を抑え、直売所を出発した私たちが次に向かったのは相模原市立小山公民館。こちらの調理室をお借りし、料理を作ります。ちなみに今回のメニューは、メンバーで相談し、カレーと豚汁に決めました。作り方は普段皆さんが食べているカレーや豚汁と変わりませんが、入れた食材は全て相模原市産のものです。可能な限り、相模原市で取れたものや、相模原市の特産品を使おう!と決めて、買い出しの際にも長野県産のニンジンではなく、相模原市産のニンジン、しかも傷がついていたり形が悪かったりして安くなっているものを敢えて購入しました。こういった形が悪い、とされている野菜は「B級」と呼ばれ通常のものよりも数十円から百円近く安くなっていますが、味は全く変わりません。

普段私たちが何気なく食べている野菜の多くは、綺麗な色や形をしていますね。ニンジンやダイコンや玉ねぎなど、スーパーで見かける野菜はどれもとても綺麗です。…しかし、野菜は育てていく過程で傷がついたり、おかしな形になったりとすることがあります。そうなった野菜は、味は傷がないものと全く変わらないのにも関わらず途端に買ってもらえなくなったり、売ってはダメと処分されたりしてしまうことがほとんどなのです。現在日本で問題になっているフードロスはこういった、形の綺麗な食材だけを私たち消費者が求めてしまっていることも原因のひとつであるとされており、少し傷がついていたり形が変わっていたりするだけなのにも関わらず一日に数トンという凄まじい量の食材や料理が廃棄されています。

今回のアクションでは出来る限り地元で採れた地元の食材を選んで使うことで、少しでもフードロスを生まないようにするという狙いがありますが、商品を買う際に気をつける以上に、調理の際にも食材が無駄にならないように気をつけなければなりません!日にちが近いものから食べたり、出来る限り残さないようにして…もし残すにしても、タッパーに入れたりラップをしたりして冷蔵庫に入れて、早めに食べ切るようにするだけで皆さんや、皆さんのご家族の人数分のフードロスを削減することが出来るんです。

自分たちが頑張っただけじゃ変わらない?いえいえ、そんなことはありません!フードロスが起きないようにすることは今日からでも出来る凄く簡単な、「生物多様性」を守る活動の一つなんです。例えば、四人家族なら四人分削減されることになります。もしも皆さんが学校やアルバイト先など色々な場所で広めてくださって、広めた方々も一緒にそれを実行すれば、広めた人数分削減されるんです!しかも、それを何日も続けたら、その日数分のフードロスを削減できます。

皆さんが毎日、一人ひとりがほんの少し気をつけるだけで、こんなにも良いことが起きちゃうんです。

料理の様子

先述したように、今回のメニューはカレーと豚汁です。ベジたべーなさんにて購入した材料はこちら!

「カレー」:津久井在来大豆(缶詰)、ニンジン、やまといも、やまゆりポーク、ネギ
「豚汁」:サトイモ、ニンジン、ダイコン、ネギ、やまゆりポーク、津久井在来大豆使用の味噌

やまゆりポークはブランド豚のためお値段は少々お高めですが、脂が甘くて赤身の部分はふわっとした食感が味わえます! 実は私は豚肉のあの独特の臭いが苦手であまり沢山は食べないのですが、やまゆりポークは臭みもなく、非常に美味しいお肉でした。「やまといも」と書かれてもあまりピンと来ない方にご説明すると、やまといもはいわゆる長芋の一種で、とろろにして食べられることが多いです。「さがみ長寿いも」という愛称があり、相模原を代表する農産物なんです!相模原台地は関東ローム層という、火山灰が堆積したことによって生まれた乾燥した土の土地で、乾燥した土地を好むやまといもにとっては非常に住み心地の良い土地なのだとか。魚の胸びれや、イチョウの葉っぱにも似た扇形をしていて、皮を剥くとぬるぬるぬめぬめして面白かったです。

「津久井在来大豆」は神奈川県津久井地域で作られてきた在来大豆で、水煮にしたりお味噌にしたりと古くから相模原の地で愛されてきた食材です。昭和50年代には神奈川県の優良品種として選ばれたりしたそうですが、だんだん栽培する人が減ってしまい、やがては「幻の大豆」といわれるようになってしまったほど… 最近は相模原市による地産地消の取り組みや食文化への関心から再び注目されるようになり、少しずつですが栽培が広がってきているそうです。これを機に、皆さんぜひ食べてみてくださいね。カレーと豚汁の作り方に関しては、普通のカレーと豚汁を作る際のものと変わりません。入れるものが少し変わっているというだけで、美味しいことは揺るぎないです。 うまい!!!!!

シゲンジャーから教わるごみ分別

美味しいカレーと豚汁を食べ終わった後はお片付けの時間!…なのですが、ふと周囲のたくさんのごみを見て私たちは困ってしまいました。豚肉が入っていた容器、野菜の皮やヘタ、汚れを拭き取った時のティッシュ、野菜を包んでいたビニール、大豆の水煮の缶詰、などなど様々な種類のごみがあります。しかし、それらをどうやって分別すればいいのか、どれがどんなごみなのかが分からなかったのです。野菜の皮やヘタは生ごみ、缶詰は缶、ティッシュは燃やせるごみ。…ですが、ビニールや、豚肉の容器などは何に分類されるのでしょう?缶詰の缶だってスチールだのアルミだの表記があってよく分かりません。それに、相模原市のごみの捨て方と、私たちが住んでいる市や町の捨て方は違います。ごみ袋を前に、立ち尽くす私たち…の前に現れたのは、「プラホワイト」と名乗る戦隊ヒーローでした。

みんなで一緒に分別しよう!!!

分別戦隊シゲンジャー銀河、参上!!!

…再びなんのこっちゃ???となった皆さん、ご安心ください。解説します。

「分別戦隊シゲンジャー銀河」とは、子どもから大人まで幅広い世代に、ごみの分別や、ごみを減量化・資源化することの重要性に関心を持ってもらうべく、平成18年8月に制定された相模原市のキャラクターです。メンバーは、一般ごみ担当のパンピーレッド、缶類担当のカンメタルオレンジ、びん類担当のボトルブルー、紙類担当のペーパーピンク、使用済み食用油担当のアブラブラウン、ペットボトル担当のペットイエロー、プラ製容器包装担当のプラホワイトの7人と、「相模原ごみDE71(でない)大作戦」のイメージキャラクターも兼ねているマスコットキャラクターのレモンちゃんで構成されています。

彼らは普段、相模原市主催のイベントや相模原市内のイベントに参加したり、或いは保育園や幼稚園に赴いたりして、市民とのふれあいを通じて「ごみを減らす」という行為について知ってもらおう!考えてもらおう!という活動をしている、すごい方々なのです。また、シゲンジャーはキャラクターであると同時に戦隊ヒーローでもあるため、少々メタい表現になりますが変身前の姿、所謂「中の人」がちゃんと存在しています。それぞれ普段は相模原市の住人として皆さんと同じように生活しているそうです。職業も農家から小学生、高校生などとバラバラなので、もしかしたら皆さんのお隣さんが、実はシゲンジャーだったりするのかも…みたいなことも十分に有り得ます。

では話を戻して。今回、私たちにごみ分別の極意を伝授するべくやって来てくださったとのこと!プラホワイトは平成18年10月にデビューされたのだとか!私たちとほぼ同年代ですね。ちなみに昨年冬に相模原市は相模原市出身の有名声優、畠中祐さんと『#相模原のTASKプロジェクト』というコラボ企画を開催されていて、その際にアブラブラウンは他の相模原市のゆるキャラと一緒に、畠中さんにアテレコをしてもらったそうです。正直、とんでもなく羨ましい。なんだそれは詳しく知りたいぞ、という方は相模原市の公式ツイッターの方へどうぞ! 

ごみの素敵な捨て方 世界を変える100グラム

皆さん一度は、ごみ捨ての時にちゃんと分別をしてねと言われたことがあると思います。ですが、それは一体何故なのかについて考えたことはありますか?

相模原市はごみの分別に対して市全体で高い関心を持っており、ごみを「一般ごみ」「資源」「容器包装プラ」「使用済小型家電」「粗大ごみ」「家電リサイクル」に分類していて、なおかつ資源と容器包装プラに関しては更に細かく分類されています。例えばペットボトルと、プラ製容器包装は同じ「容器包装プラ」に属していて捨てる曜日も同じですが、袋は別々にして捨てなければいけません。これはこの二つのリサイクルのルートが違うということと、収集後の選別作業の効率化が目的なのだとか。一瞬面倒だな、と思ってしまうかもしれませんが、このひと手間でリサイクルがよりしやすくなるのだそうです。

また、相模原市では「ごみの減量化・資源化」「混ぜればごみ、分ければ資源!」というスローガンを掲げて、減量化、つまり市民一人が一日あたり100グラムのごみを減らすことを目標とした取り組みを行ない、同時にごみを適切に分別し資源として再利用していくことを積極的に行なっています。

まず、なぜごみを捨てる量を減らす必要があるのでしょう? 皆さん考えてみてください。物を燃やした時、その燃やした物は完全に無くなってしまうでしょうか? …そうですね、無くなりませんね。多くの場合、物を燃やすと灰が残ります。ではこの灰はどうすればいいでしょう。…そう、埋めて廃棄する必要があるんです。この灰を捨てる場所を「最終処分場」と言い、日本全国に設置されていて、相模原市にもあります。そしてもちろん、最終処分場にはその灰をどれだけ埋められるかという容量の限界があり、満杯になれば当然新しい処分場を作らなくてはいけません。しかし、最終処分場を作るのは非常に大変で、すぐにというのはまず無理です。

では、クイズです。相模原市の最終処分場は、あと何年で満杯になってしまうでしょうか?

…正解は、約15年。つまり、令和19年ごろには満杯になってしまうとされています。

意外と短いなと思った方もいらっしゃるかもしれませんね。私たちの予測は正解の15年よりも倍以上多く、30年や40年くらいかと考えていました。私たちが老年と呼ばれる時期になるくらいまでは大丈夫だろう、という安易な予測をしていました。ですが、実際はその半分の年数しかありません。しかし、資源循環推進課の職員さんとプラホワイト曰く、これでもかなり「延命化できた」上での数値なのだとか。何の対策もせずにいたままだったら、もうとっくの昔に満杯になっていたそうです。プラホワイトをはじめとしたシゲンジャーによる広報活動や、

Refuse(リフューズ):不必要なものは買わない、使わない

Reduce(リデュース):ごみになるものを減らす

Reuse(リユース):ものを繰り返し使う

Recycle(リサイクル):再び資源として使う

の4Rを日常生活の中で意識し、ごみを出す量を出来る限り減量しよう!という取り組みである「相模原ごみDE 71(でない)大作戦」(「DE」=「Do it , Everybody!」、「71」=相模原71万市民 ※開始当時の人口)などをはじめとした相模原市全体での努力により、15年後まで満杯にならないという状態にすることができているのです。しかし、一方で相模原市は次の処分場をどこに設置するのかがまだ決まっていません。現在使用している処分場が満杯になってしまう15年の間に、新たな処分場を見つけなくてはなりません。そこで相模原市はまず現在使用している処分場を延命化しようと考えました。相模原市が掲げている「ごみの減量化・資源化」は、この「処分場の延命化」という目的を達成するためであるということも大きいのだそうです。

無論、それだけが目的ではありません。

先程紹介した「相模原ごみDE 71大作戦」とは、相模原市の住民が一日に出すごみの量を、レモン一個分、つまり100グラム減らそう!という試みなのですが、たった100グラムと侮るなかれ。相模原市の住民一人ひとりが一日に出すごみの量を今捨てている量から100グラム減らすと、そもそもごみの量が年間で26,000トン(ごみ収集車13,000台分の量)も削減されるのです。これだけの量が減るとなると、最終処分場の限界が4~6年延命されます。ごみを処分するために発生する莫大なCO2の量は10,700トンも削減され、何よりごみ処理のための経費が一年間で2~3億円も節約されることで別の事業にお金を回すことができるようになるんです!びっくりですよね、ごみを一日にたった100グラム減らすだけでこんなに沢山の良いことが起きちゃうんですよ!もしも皆さんが住んでいる地域で、同じように一日に出すごみの量を100グラム減らした場合、どうなってしまうのでしょう…? きっと物凄く、物凄く、良いことが起きるのではないでしょうか?!

ごみの問題を解決することは、即ち生物多様性を守ることと言っても過言ではありません。

そもそもの話、ごみがこれほどまでに大量に生み出されてしまうのは何故でしょう? これは、「大量生産」「大量消費」という現代社会の性質によるところが大きいとされています。必要なものを必要なだけ作ったり使ったりするのではなく、大量に作って大量に使って大量に捨てる、という構造になったために起きているのです。大量に作ることで商品ひとつに掛かるコストが下がり、安価なものを大量に売ることで大量の富を得ることが出来る…商売という点では、これは正しいことなのかもしれません。しかし、その商売というのも、元を辿ればその全てが「自然」によって齎されたもの、つまりは生物多様性が保たれていることによる恩恵なのです。自然界や生物多様性に対して私たち人間が与えているダメージ四種類を先述しましたが、ごみに関する問題はその四種類全てに関わっています。里地里山の維持に関しても、紐解いていけばそこには、この安価なものを大量に売ることで大量の富を得るという「大量」の呪いとでも言って然るべき、現代社会の、そして私たち現代社会を生きる人間による影響がありました。

【私たちなりの答え】

二回のフィールドワークを経て得たもの感じたもの

ぎーにゃ

生物多様性?なにそれ美味しいの?な状態の三人による、手探りと初めましてだらけのフィールドワークでした。私たちの身近なところに、こんな大きな問題が潜んでいたとは思いもしていませんでした。博物館、というと何だか昔のことしか学べない場所だと感じる方も多いかもしれませんが、実際は過去から学んで現在を観察し未来に備える凄い場所です。料理もある意味博物館と同じかもしれません。レシピや調理器具、食材も全て過去に作られたり生み出されたりしたものです。それをもとに、現在を生きる私たちが学び、体験して、こうして記事という形で伝えることで、未来に何かしらの結果を残せかもしれない!と思うことが出来た、貴重な機会でした。

あず

食材を買うところからごみを捨てるまでの流れを生物多様性に絡め考えながら料理をしたことで、自分たちが少しでも買うものや捨てる方法を変えることで簡単に取り組み守れるものがあることを、身をもって体験することが出来たと感じると同時に、身近な行動から意識することで変われることがあることを学びました。カレーと豚汁、どちらも学校の調理実習でやるような簡単で身近なレシピですので、是非自分の地域の食材などに目を向けながらやってみてください!

こま

地産地消をしようというテーマで、相模原市産の豊富な食材を使って料理しました。とても美味しくできたし、相模原にはこんなにおいしい食材がたくさんあるのか!という発見にもなりました。このような簡単な取り組みでも、守れるものがあるかもしれません。まずは、皆さんにも地元の食材はどんなものがあるのか知っていただきたいです!自分たちの食に対する意識が生物多様性という方向に変わったFWでした。

私たちはただの学生で、皆さんと同じように、普通の日常を過ごしていたいと考えている人間の内の一人に過ぎません。ですが、私たちにも出来ることはあります。沢山あります。先程私は、現代社会を生きる人間が自然環境や生物多様性に対して与えてきたダメージや影響の大きさを挙げましたが、逆を言えば、私たち、そして皆さんの行動によって自然環境や生物多様性を守ることもできます。例えば、ごみをちゃんと分別し、尚且つ出す量そのものを減らす、つまり「正しく捨てる」だけで色々な良いことが起き、ゆくゆくは世界を救うことができるのです。皆さん一人ひとりが行動することが重要なのです。誰かがやってくれるではなく、私たちがやる、ということが大事なのです。私たちは生物多様性について「自分には関係ない」と勝手に判断し、環境問題についても誰かがそのうち何とかしてやってくれることを待つばかりでしたが、それは正しいとは言えません。私たちが今過ごしている日常を守るためには、当事者である私たちこそが動かなければならないのです。

こちらの記事は、令和5年2月25日のシンポジウムの方で紹介させていただきました。後日投稿される、後編ではシンポジウムの様子やプレゼンテーションの内容について書いていますので、そちらの方もぜひ読んでみてください!

では、ここまで読んでくださった皆さんありがとうございました!

皆さんもぜひ、生物多様性を守るアクションをやってみてくださいね~!


記事製作者:ぎーにゃ
全体メンバー:あず、こま、ぎーにゃ

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